37 お文殊さまと宿借り普賢お普賢さまは、もと金持であったど。「なじょしたら貧乏するもんだべ、貧乏のしようない」 ほしたらば、 「箸焼くと、粗末にすっど貧乏するもんださ」 と教えて呉っじゃ。 「ほんじゃ、してみっか」 というわけで、箸をかまわず焼いた。そしたらやっぱり貧乏してしまった。ん だから箸は焼くなよ、古くなったら流せよという。それで二度家を建てらんねた めに、お普賢さまは文殊さまより頭よかったけんど、 「いや、おれ、家に入るべく探していっけんども、どこにもないし、あだい大き な家さ入っていんべ、お前は一寸六分だかの身成りしてで、あのような大きい家 さ入っていっこともない筈だ。おれに、どこか貸してくろ」 ていうたら、 「お前は賢いから、裏貸すから入れ、その代り、おれ、あまり頭ええなでないか ら、おれどこさ、さまざま聞きにくる。たのみに来る。たのみにきたとき、お前、 うしろで教えろよ、おれさ」 そしたば、「ええどこでない」ていう約束で、入ったんだど。ほんで文殊さまは きかれっど、うしろにいる普賢さまが教えて呉 (け) るんだど。 |
(平田幸一) |
>>米沢市塩井の昔話 目次へ |