22 馬鹿殿さま

 お殿さまさ、
「今日は大変ええ作 (さく) とれだし、一つお殿さまさ菜一株もっていって上げたい」
 というわけで、大きな蕪一つもって行った。
「お殿さま、うちでとれた蕪です。これを一つ食べてみて下さい」
 殿さま、とっても喜んだ。そしてさっそく料理して食べてみたら、やわくて、 とってもうまかった。
「こんな蕪食ったことない。やわくて」
 また欲しくなって、あの百姓にまた所望したど。ほしたらまた次に菜をもって 行ったら、今度は作りよう聞かっだ。
「どうして、こういう菜を作るんだ」
 て言うたらば、
「こうして蒔いて、こうしてダラ(人糞肥料)呉っじぇ、ほしてこういう風にす るから、やっこいなだ」
 ていうたど。こんどは後に硬い菜だったそうだ。あんまり硬いので、前に食っ たのと全然ちがう硬っちいもんだから、
「近う、まいれ」て、その菜さ、
「ダラかけて来い」
 て言うたど。
(平田幸一)
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