13 こぶとり

 山さ、おじいさん、柴伐りに行ったど。ほうしたれば山暗くなって、お雷さま で、岡立ち(雨)で、おじいさんがどこさ行ったらええか分かんねくて、うろう ろていたらば、大きな松の木にホラ穴あったど。そこさしゃがんでいたらば、コ ブじいさんの前に、猿共いっぱい来て、そうして踊りおどったり何かして、一生 けんめいでして、今度猿に見つけらっじぇ、
「じいさん、じいさんもはまれ」
 なて、びりびり引っぱらっで、おじいさんが踊りも上手だし、にこやかな顔し てるもんだから、はまれなて言わっではまったど。ほうしてこんど、夜明ける頃、
「おじいさん、そのコブ、おれもらって行くべ」
 て、ここがら、ガワーッと取らっじゃど。そうしてきれいになって家さ帰って きたど。ほうしてこんど、おばぁさんに、
「なんだべ、じいちゃん、その顔きれいになったもんだ」
 て、婆にもうんと喜ばっじゃど。そうしているうちに隣のばぁさんが来たど。
「なんだ、こっちの家のじいさん、きれいになったこと、なじょした」
 なて言うど、正直じいさん、ばぁさんなもんだから、細かにみな教えたど。ほ うしたら隣の欲ふかじいさん、
「ほんじゃ、おれもそういう風にすんべ」
 なて、そして行ったど。その欲ふかいから顔さまで現われるもんだから、踊り さはまれて言わっで、はまったげんど、踊り下手だべし、歌は下手なもんだから、
「こがな、じじい、分かんね」
「コブ、いま一つ呉れんべ」
 て、隣のじじいからとったコブ、ビダンとくっつけらっで、両方のコブになっ たど。
 んだから、意地悪ばりするじいさんは、罰当って、コブくっつけらっだんだか ら、お前だ決して意地わるいことさんね。どーびんと。
(伊藤せう)
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