2 オッタンタカ鳥むかしあったけど。あるところに、仲のええ兄弟二人ぐらしの家あったんだそうだ。兄は、ほだげんど体が弱くて働けなくなってしまったど。んで、弟が兄の分も働かなければ食 えないというわけで、毎日々々、田んぼに行き、山に行ったりして、またあると きは町に行って、うまいもの買ってきて、ほして、兄に食せて、何とか早く治っ てもらいたいていう感心な弟であったど。 ところが、ある日兄がふと、 「おれにこんなうまいもの、毎日々々食せてくれる感心な舎弟だな」 と思ったげんども、ふと悪い気が起きて、 「おれにこんなにして食せることには、舎弟なのなんぼかうまいもの食 (く) ってんな でないか、一ぺん見てみたいもんだ」 て言うわけで考えておったが、仲々見つける折がなかった。 あるとき、その昼休みしったとき、兄がふと、「よし、こん時にこそ見てやろう」 ていうわけで、刀を持って弟を殺してしまった。そうして腹をさいて見たところ が、 「いやいや、うまいものどころか、とてつもない」 全く人間の食えるものでないようなものばかり、芋の皮だとか、あるいは木の 芽だとか、本当にひどいものばっかり食っておった。その時に兄は、 「いやいや、とんなことをしてしまった。こんなことだったら、殺すでなかった。 何という、おれも浅はかな考え起したもんだろう。これほどまでおれを思って働 いてくれんのに……」 て言うていた。そん時に、神さまが、 「お前は、とんなことをしたもんだ。人間としてなすべきことでないことをして しまった。罰を与える。制裁を加える」 として、鳥にしてしまったど。一羽の鳥にしてしまって、それがホトトギス、 つまりオッタンタカ鳥と鳴かんなね鳥である。オッタンタカ鳥は、 「お前が朝から夕までに、一日のうちに八千八声鳴かない限りは決して餌 (もの) を食べ てはならないぞ」 ということを神にいましめられて、「ああ、悪かった、そうする」と、弟に詫び なくちゃなんないから、いくらひもじい思いをしても、八千八声鳴いて、その後 食べることにするということを神と約束したど。それで朝は明けるが早いか、オッ タンタカ鳥、オッタンタカ鳥と、木から木へ飛び廻って歩き、暑いのにも寒いの にも、そうして喉から血が吐き出すほどにも鳴き叫んでいたど。 夕刻になると、立派に「オッタンタカチョウ」と鳴けずに、「オタタカチョウ、 オタ、オタ、オタタカチョウ」というような鳴き音しかできなくなってしまった。 それを見ておったモズが同情して、 「あれでは困ったことだろう、モノの食べる閑がないじゃないか」 と、可哀そうだ、いつか声の止んだとき、食べられるだろうといって、青蛙や ケラコなどをとって、枯木の先に刺しておくなだど。んで、お前たちも、よくこ ういうことも見当ることもあるだろう。それがモズの同情から、ホトトギスに食 せようという友人愛だそうだから、決してそれは取ってなんねぞ。どろびん。 (平田幸一) | >>米沢市塩井の昔話 目次へ | |