23 笠地蔵

 二人で暮して、じいさんが山さ行って、柴を丸って背負って来て、そして米沢さ行って売ってきて、米買って食べっだど。したらこんどはお正月にもなるからって、たくさんクゴ帽子作って町さ背負って行ったんだど。
 ところが、もろもろ、もろと止むこと得ずに雪が降ってきた。ほして道端にお地蔵さま立ってやったど。
 見れば見るほど、頭から白子大明神になって雪に降らっで可哀そうだ。
「おれ、これからお年とりになど、何も食わねで、ただ年とったたてもええから、んだから大根煮で年取るようにはぁ、この地蔵さまさかぶせんべ」
 と思って、五つも六つも七つも八つも立ってだ地蔵さまさ、そのクゴ帽子全部かぶせた。手ぶらになった。ほうして、
「はてなぁ、こりゃ米も買わんね。年取りに大根の塩煮で年とりか」
 なて帰って来た。
「ばんちゃよ、今来た」
 て言うた。
「よく来た、早かったな、じんつぁ、なんだまず、その早いこと、早いこと。何買って来た」
「よっく聞いて呉ろな、何も買って来ね」
「何したごんだ」
「何もしね、地蔵さま、雪こまぶりになってだから、ぺろっと地蔵さまにかぶせたれば、かえってか足(た)んねがら、これからまっと拵(こさ)ってかぶせんなね。ばば、ばば、んじゃ年取りに大根さ塩入っで煮て食って、年取りしっべぇはぁ」
 て言うたど。
「あまりええ、あまりええ。おらだも寒いも、地蔵さま寒いも同じことだから、ほんじゃらばはぁ、おらだ大根煮でそいつでお年取りして、酒の代りにお湯呑んではぁ、そしてお年取りだぁ」
 て言うたど。
「んだら、あまりええごで」
 て、そしてこんど、いま一人の地蔵さま残ったから、またかぶせて来るって、またかぶせてきたど、お年取りの日。
 ほうしてこんど、大根煮でお湯呑んで寝たど。ほして一寝入り寝て目覚ましてみたら、どこかで何か変な声したって。
「何だべまず、何か変な声したぜ」
 て言うたど。
「ほがなことあんまぇちゃえ、何も変な声などしね」
「いや、変な声したぜ」
 て言うたど。ほれからだんだんとその声近くなって、「エンヤラサー、ドッコイショ」なて言うなだど。
「何だべまず、じさま。ダイモチの音すっぜ」
「ダイモチなて、夜中にダイモチなどひいてる馬鹿もあんまいぞ」
 て言うた。
「ほんだて、ほだぜ、聞いてでみろ」
 だんだんと声近くなって、
「いまちいとだぞ、いまちいとだぞ」
 なて言う。
  ホラ、ヨイトモショ エンヤラサノサ
 なて、だんだんと近くなってきた。ほうすっど、
  じじ小屋どこだ、ばば小屋どこだ
「ああ、ここだ、ここだ」
 て言う音する。ほうしたらが、戸も開けねで、窓からドガンとお雷さま落ちたような音したって。そして「何だべな」て、恐っかなくて行っても見らんねくてブルブルふるけて、年取り元日だてば、困っていだ。いよいよ夜明けたもんだから、じんつぁ、手ひかえして、一人で行かんねくて、台所さ二人して行ってみたど。ほうしたら、大きな包み落っでだって。見たら米とお魚とお酒に着物など、どっさり、お金も、みな丸めてカマスさ入っじゃり、何かして窓破って入っていだっけど。ほうして、
「いやいや、いやいや、何だべまず」
 なて喜んでいだんだど。したらその晩げ、
「こさ入ったもの食ったってええんねが、御馳走になれ」
 なて、まず腹減っているもんだから、大根食って年取りしたもんだから、食ったど。ちいと。
「恐っかねがら、あんまり取らんね」
 なていだら、にこにこ、にこにこと地蔵さま笑って、
「ええ年取りしたから、おらだ。寒くもなくてええ年取りしたから、じじとばばも飯(まんま)とお酒と飲んで、着物きて、ええ年取りして呉ろ」
 て、夢枕に立ったど。んだから、人さも神さまさも、情ごころざぁ、掛けんなねもんだって。どろびん。

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