17 団子浄土

 じさま庭掃きしったら、団子落っでだけど。その団子拾うべと思ったら転んで行って、穴さ入ったてよ。
 そしてずうっと行ったら、お地蔵さま立ってだって。そしてお地蔵さま、めんごい面(つら)して立ってで、
「お地蔵さま、ここさ団子転んで来ながったか」
 て言うたば、
「来た。うまそうだから、おれ食った」
 そうしたば、
「ほんじゃ、おれの膝さ上がってみろ」
 て言うので、「ハイ」なて膝さ上がったら、こんど、
「肩さ上がってみろ」
 て。そして、
「ほらほら、誰か話し声する、今にここさ鬼共来て、博奕(ばくち)すっから、その時、よっぽどもよった時、トテコのコーて言えよ」
 なて教えだど。ほうすっどこんど、人の声するもんだから、地蔵さまの背中さ隠っで居た。したら鬼共きて、〈丁〉だの〈半〉だのて大(たい)した博奕したんだど。そしたら、
「トテコのコー」て言うたど。
「一番鶏だ、まだ早い」
「トテコのコー」て、よっぽどもよってから言うたど。
「二番鶏。三番鶏鳴っど人ぁ来っから、さぁ歩(あ)えべ」
 なているうちに、またトテコのコーて言うたもんだから、
「三番鶏だもの、早く歩(あ)えべ」
 て言うもんで、こんど銭でも金でもみな投げっ放しにして逃げて行ってしまって、鬼ども。そこさ出てきて、そのお金みな、じさま持って来たど。
 そしたら隣の意地悪じさま、やっぱり隣金持ちになったことなんて言って、そして自分も行ったて言うたな。ほして、誰も「上がれ」なて地蔵さま言わねなだど。まず、地蔵さまんどこ撫でだりして、赤えんばい(おべっか)して、そして膝さ上がったり、肩さなどひとつも上がれなて言わねな、上がったど。そしてこんど何か話し声するもんだから、テンテンと背中さ隠っだど。そしたらやっぱり鬼、博奕したど。そんで鶏の真似したど。
 そして三番鶏になったらば、今行くべと思ってやめて、
「三番鶏だから、ほんじゃ歩(あ)えべよ」
 なて、行くべと思ったんだげんども、じじぁ嬉しくてこたえらんねもんだから、「あの銭みなおれのになる」と思って、三番鶏のとき、コケコッコー、ヘヘッて笑ったてよ。ほしたらよ、鬼怒って、
「んじゃ、今んな人間でないか、鶏笑うなて、あったもんでない」
 ほうして地蔵さまのうしろさ廻ってきたってよ。ほうしたらじさま、すくんでいだど。
「このじさま、にせ鶏だ」
 なてはぁ、みんなに押えらっで、鬼共にはぁ、力まかせに叩がっで、血だら真赤にさっだって。ほんでこんど、ばば、何ほど貰って来っかしんねぇと思って、喜んで屋根の上さあがって見っだど。そしたら血だら真赤になって、オーンオーンなて、おぼこみたいに手放しで泣いて来たもんだから、いや、ばば、喜んで、
「どれほど重たいんだか、おら家のじさま唄うたって来た」
 泣いっだな知しゃねで、大声で唄うたって来たから、迎えに行かんなねと思って行ってみたらば、間違いで、血だら真赤になって来たけど。
 んだから、人の真似ざぁするもんでないけど。どろびん。

>>四方ぶらりん 目次へ