14 きりぎりすとあり

 きりぎりすて、きれいな着物きて歌うたっているもなぁ。そしたら毎日何にも仕事しないで、きりぎりす、涼しいとこに歌うたっていると、お盆も過ぎて九月になって十月頃になったらよ、こんど寒くなって着物も枯(か)ちゃれで来てな、よくよく寒くなった。んで、
「はてな、困ったな、誰に相談したらええんだか。食べもの一つあるもんでないんだし、何とも寒くて日送らんねぐなったようだ」
 して、
「小鳥さん、小鳥さん」
 鳥さえずっていたけがら、木の下さ行ってみだって。
「何だか、夏はええがったげんど、こう寒くなっては何とも仕様ないから、助けて下さい」
 て行った。したら小鳥が、「夏どうしてた」て。
「夏涼しくて、毎日歌うたって暮しった」
 て言うたら、
「そんなの、かまわんねごで」
 て、飛んで行ってしまった。今度は川端さノサリノサリと行ったば、蛙(びっき)、ちょこなんとして川っぷちに居た。
「蛙さん、蛙さん、あの、こう寒くなって、おれ、着物もなくなったし、みな枯(か)ちゃれではぁ、損じてしまったし、食べるものもないから、助けて下さい」
 て言うたら、
「夏何しった」
 なて、ちっとも蛙など言わね。黙って聞いっだけぁ、ジャポンと水さ入ってしまったど。そして今度聞くところがなくなって、そこらさまよって騒いだら、ありが一生懸命で何が引きずって働いっだ。
「ありさん、ありさん、おれ寒くてとても死にそうだから、助けて呉ろ」
 て言うたら、
「何しったごんだ」
「夏のうち、涼しいうちに歌うたっていたけぁ、今となっては歌も出なくなって困っていたから、助けて呉ろ」
 て言うたら、ありさんは、
「おら家の家さ入れ」
 て、チョロンと入って行って、きりぎりすも入れてくれたど。そんで、きりぎりすは中さ入ってみたれば、一生懸命でみんなが稼いでいだってよ。ほんで今度ぐるっと見たど。
「ここはおらだの倉庫で、夏一生懸命で稼いだもんで、食べものはどっさりあるし、こっちはありの学校で、ここで生徒が教えらっでいっどこだ。お前、学校あっか」
「学校などなかった。おらだ勝手に歌っていだなだ、音楽も何もなく勝手に歌っていだなだ」
「そんじゃ分んないごで。きりぎりすさん、それでは駄目だから、一生懸命で夏働いて、そうして立派に学校建てて、そうしてこんど、みんなで食べもの、冬うち食べんのをしまっておくようにして、丁度食べるものばっかりでなく、冬うちの物心掛けるようにして、そうしなね」
 て、ありさんに教えらっじゃてよ。そんでそれから、
「なるほど、おれが悪るがった。こんどそんなこと決してしね」
 て、心入れ換えて、穴から出てきて、きりぎりすも昔と違って、来年からのきりぎりすは賢くなるようになるごんだべて。んだから、お前だも一生懸命に稼いで、学ばんなねぞ。どろびん。

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