12 蛇 聟

毎日、きれいな男が通ってきたど。したら、かあちゃんが、
「何だ、あの男、身元も知しゃねもの、毎日こうしてええもんだか」
 て言うたって。そしたらどこさ行ったじもなく、朝になっど居なくなる。したら、こっちでも変だと思ってだら、白い糸に針を衣裳の裾さチョクッと刺してやった。そうすっど、コロコロ、コロコロと玉ほぐれて行ったわけだ。そうすっどその糸をたよりに行ったら、よっぽど家から離っだどこの原に、穴あって、穴さ糸が入ってる。こうやって聞いてみっど、何となしに、中で話し声する。んだから娘が聞いっだてよ。したら、
「んだから、人間さなの決して構うなて言うに、われ、馬鹿で人間さなど行ってっから、そういう風になったごんだ。蛇は鉄類毒だから、そういうことして針など刺さっでは死んでしまわんなねごではぁ」
 て、そのおっかさの音するてよ。
 その娘、穴んどこに耳をつけて聞いっだら、
「ほだてなぁ、その代り子どもいっぱい娘の腹さおいて来たから、おれ死んだたて、子どもいっぱいふえっから、ええなだ」
 て言うたてよ。そしたら、
「馬鹿なこと語っていねんだ、われ、ほだから馬鹿だごんだ、人間なんて賢いもんでよ、これからじきに五月になって菖蒲とヨモギをとって、それをお湯さ入っで、菖蒲湯を立てて、入っじど、そんなものの腹さ入ったものなど、すっかり降りて来るもんだから、にさ死ぬべし、子どもはそうして人に殺されんべしすっど、何にもなんね。ただ馬鹿みたいなわればりだごで、ほだから人さなど行くなて言うに…」
 かあちゃん蛇は、やたらにくやしがっていだっけ。そうすっどこんどはそいつ聞いて、娘テンテンと来て、五月節句になったもんだから、宵節句の晩げからはぁ、軒場さ菖蒲とヨモギさして、そして自分が菖蒲とヨモギお湯さ入っで、入ったらばぺろっと流産して、その蛇子出たど。んだから菖蒲湯ざぁ入るもんだど。どろびん。

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