6 蛙女房

 むかしあるとき、蟇みたいな大洞蛙(びつき)とって、子どもら、うんと石で殴(なぐ)ってせめていだってよ。
 ある親父つぁま、そこ通りかかって可哀そうなごんだなぁと思って、そしてその蟇蛙、お金やって買ったって。ほうしてこんど大きな川さもって行って放したど。
「決して、こんどこっちの道傍さ出てくんなよ、道傍さ出てくっど、そういうふうにされっから」
 て教えて放してやったど。したらその蛙、また後振り返して、こうして見っだけ、行ったど。ほしてよっぽど経(もよ)ったら、
「道に間違って、こういうどこさ来てはぁ、宿もないから泊めて呉ろ」
 て、娘が来たって。そしてその親父つぁまどこさ来て、
「毎日泊めておいておくやい」
 なて、かまわずいて、
「流しさせておくやい。洗濯させておくやい」
 なて、かまわず居んなだど。ほして大した飯(まんま)食ね。
「おれ、飯なてあんまり食ねったてええから、お湯でも飲んで…」
 なて言う。
「なんで飯食ねば、やせてしまうべちゃえ」
「ええなだ。おれなどそんなに食わねったてええなだから」
 なて、その親父つぁま、奇態で仕様ないから…。
「おれ、今日よ、御法事で行ってくっから、あの、やっておくやい」
 なて言うもんだから、
「行ってこい、行ってこい」
 て言うては見たものの、後つけてみだって。その親父つぁまよ。ほしたら少し山のとこさ行って、「入って行く気だな」と思っていたら、水溜りの大きな、そこさジャポンと入って行ったってよ。ほうしたもんで、
「あららら、なんだて、おらえの姉さま、あがな水溜りさ入って行った」
 と思ったら、よっぽどおもったら、ガジゴジ、ガジゴジなて、蛙うんと鳴いたど。
「うん、蛙か、ほんじゃ」
 なて、大きな石持(たが)って、音のすっどさポーンと投げだど。ほしたら音しなくなった。ほしたら夕方なったら、「ただいま」て帰ってきた。
「何だまず、遅いこと」
 なて言うたら、
「んだず、御法事の最中に誰かにいたずらさっで、まず、和尚さまの頭が割れてお経の最中に石投げらっで、何だかんだて騒いで遅くなったごんだ」
 て来たって。ほしたらその親父つぁま、
「何だ、われ、そんなこと言うごんでは、蛙だな」
 て言うたど。したら「何で」て言うたら、「おれだ、その石投げだな」て言うたば、顔色変えではぁ、流しの尻さチャポンと入って行ぐどき、
「おれ、助けらっじゃなのお礼返しに、お前一人でいるようだから、御飯出したり、洗濯したりと思って来たなだ、おれ蛙だごんだ、さよなら」
 て、流しの尻の水さ、ジャポンと入って行ったってよ。んだから、恩返ししたなだ。んだから何でも助けておけばな…。どろびん。

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