13 桑原あるとき、ある女が田の草とりしった。ほの女の人がきわめて出臍で、へそが大きくて嫁に行かんねがったど。たまたま、雷さま鳴ってきたと思ったら、雷さま、雲の合間から足、つっぱずして、ぼさっとしったもんだから、落ちてきたわけだ。地上さ落ちてきて、唯も帰らんね。唯帰って行けば、雷さまの親方から怒られっから、臍の一つ二つ取って行がんなねていうわけで、ほの女の臍さ手つっこんでみたれば、臍すばらしく大きいもんだから、間違って、臍の下の方さ手やったていうんだな。間違ってな。ほうしたら、何かもさもさすっど思って、ぶっ魂消て、すばらしい大きな声出したけぁ、逃げて行くとき、〈桑原、桑原〉て逃げて行ったていうんだな、その雷さまが、その女の人がつくづく見っだていうんだな。 「はぁ、小松原ていう話は聞いたことあっけんど、桑原っていうて逃げて行った。おかしなこともあるもんだ。雷さまはきっと〈桑原〉おっかないんだかも知んない」 というわけで、ほの女が村さ帰ってきて、そう言うたもんだから、雷さま鳴っどき、下から「桑原、桑原」て言うてやっど、 「あそこには、恐っかないものある」 て、よけて通ったから、雷さまには〈桑原〉ていうどええていう話だど。 |
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