19 那須野ヶ原の殺生石那須野ヶ原の殺生石の天井を鳥が飛ぶ と、落ちるとしていたど。むかし、妲妃 (だっき) のためにそうなったとい う話だ。あるところから来た者は、ここ の墓地みたいなとこに、とんな者ぁ埋 (い) け らっでだ。世の中さ出 (で) きたいというから 掘ってみろといわっで、何宝でてくっか と思って、みんな掘ったそうだ。そした ら、影出はってきて、影でもあっかと思っ たら、そこの方に泡みたいなものあっ かったそうだ。見ているうちに、その泡 はふくれる・ふくれる。ふくっでこぼれ るようになったって。そしてその泡が裾 さついたごんだど。そしたば、その女は 妊んだそうだ。そういう風で妊んだ者は、 「なじょにか、ええ子出 (で) んだか」 と喜んでいたべな。ところが出きた女 の子の見事なのだったど。そいつぁ、こ んど天子さまさ貰わっだもんだど。そし たら、笑うということはない女だけど。 まず人は、痛いことさせたり、切らっだ りなんかしないど笑わねがったど。 天子さまは笑うとこ見たくて、もん ぼっではぁ、人切って笑わせたりしてや りたくて仕様なくなったど。 それから家来は何とも不思議に思って、 「あれは何者 (もん) ではない」 と、腹さ入っていたものを俎 (まないた) さ上げ て、腹裂くんだら、とても喜んで見てる。 「こんじゃ、滅びる」 と思って、いつかあれを見破って呉れ んなねと思って、一生懸命で神さまお祈 りして、そしたところは、鏡さずいたご んだど。それから、 「こいつで現わして呉れんなね」 と、その人切ったりすんの喜ぶざぁ、 不思議だと思って、そういうとき、鏡を 現わしたところが、尻尾七本どかに裂 けっだ大狐に現われたど。 そしてそいつ現わっだもんだから、矢 打 (ぶ) っても何しても姿にかえるんだしすっ じど、何とも仕様なくているうちに、 「とてもこんじゃ分んね」 と、狐が雲呼んで天井さ上ったそうだ。 そして那須野ヶ原に落っで石になったと いう話。 えらい和尚さまで玄翁和尚という人が、 「そんなことしてらんね、おれ、あいつ 割ってくれらんなね」 といだったった。その和尚さまはお経 を上げて石割りすんなゲンノウを拵 (こしゃ) わ せて割ったど。そして割ったところが、 やっぱし女に化けて雲呼んで支那に帰っ て行ってしまったど。 |
(海老名ちゃう) |
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