6 狼むかし

 男の友だち二人で、こんど寒くなっか ら、
「薪 木 (たきぎ) でも採って、貯 (たく) わえておかんな ね」
 と、友だちで山さ行ったそうだ。そう したところが、ちょっと脇から知 (し) しゃね 男、
「おれも山さ薪木とりに行くのだ。おれ と一緒に、おれ、山ば知ってたから歩 (あ) え べ」
 と、こういう男は入って来たどな。な んだか気味がわるいだっでえようなもん だげんど、旅は道ずれ世は情けだから、 こりゃ嫌 (や) んだなていわんねから、一つに 行ったところぁ、どこもかこも山、あっ ちだこっちだとたくさんになったから、 今度は行ったらええべはぁなぁというた ところぁ、
「まず、昼眠して行ったらええがんべ」
 ということで、眠たそうだ。そしたば その男が出はって行って、一人は眠って いたげんど、不思議だと思って一人は眠 んねで眠たふりしったど。そうしたとこ ろが、出はって行って、着物など脱いで、 少しおもうじど馬など飼っていた広いと ころあったどな。そこさ行って、馬こ一 匹食ったそうだ。そしたば狼だったじも な。そしてまた知らんふりして、こんど 行ったらええがなぁと思って、一緒に 帰って来たってな。そしたばそいつ腹病 みしたごんだどな。
 いやいや、ばだばだと腹病みして、一 人は眠ったものは知 (し) しゃねもんだから、 一つに行ったもんだもの、腹でも揉んで 呉たらええがんべと言うたところが、一 人が抑えて、
「あれは狼だ、あれは馬一匹食ったから、 腹だて病 (や) めっこで。あっげなもの構うこ とないから、おらだばり逃げてあえべ」
 そこでああだ、こうだというと、おら だも何 (な) じょされっか分んねから、ここま で来たなだげんど、さいわいだから逃げ ろと、逃げてきて、みんなさ教えたとこ ろぁ、
「ほんだらば…」
 と思って、みんな棒持 (たが) って行ったそう だ。狼は死にそうだったど。そして狼は、
「貴様たちと一つに行って、ずうっと冬 の山を見て、山でなく里で暮すべと思っ たの、情けないなぁ、一つに行かんねご んだら…」
 なて、苦しんでいたけど。そしてまず そういう話で行ってみたら、なんぼ古い もんだったか、赤くなった毛で死んでい たけど。そのおかげで村荒さんねがった ど喜ばっだど。
(海老名ちゃう)
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