3 舟のりと大鳥あるところに、舟のりして楽しんでい る人いだったそうだ。あるとき、嵐でどこさ舟が連 (せ) て行かっ たか分んねくて、その落付いたところが、 何処見ない砂やらの広いところさ引き上 げらっだど。そうしたところが、 「こがえなところにいては死なんなねべ はなぁ、見るところ砂ばりで木など無い んだし、食うものも無いんだしすっから、 死なんなねべなぁ」 と思っているうちに、びゅうという音 して暗くなったそうだ。こんどはまた 嵐ぁ来たと思ったところぁ、大きな鳥ぁ 翼ひろげて、その人のとこさ来たもんだ けど。そうしたところぁ、その人はどう せここで死ぬんだごんだらば、この鳥の 足さ喰っついて、どこでもかこでも歩い てみんべと思って、紐でギィギィとつな いで、そうしたところぁ鳥は飛び始めた ことだど。そして水や川だ、山だと、ずっ と行って、ちょっと谷さ落ちたごんだず もな。こんどは、 「ここは谷だから、また何処さか連 (せ) て行 かれっど困っから…」 と、わらわらとその紐を解いて、そし たところぁ、彪だか虎だか見つけて、落 ちたなだけどもな。そしてこんどその鳥 がそのものをさらって、また飛んで行っ たど。そしたところが「ああ、さいわい だ」と思って大きな石のかげさ隠っだも んだから、安心してうしろの石を見たと ころが、ヒカヒカというもんだどもな。 叩いてみたら、宝石だけずもな。 「いや、とんだ宝のとこさ落さっだもん だ。この谷ずっと下ったらば、何かあん べがら…」 と、持 (たが) かれるだけ石を砕いて背負った り、持 (たが) ったりして帰ったど。大へんに宝 石で安泰になったど。 |
(海老名ちゃう) |
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