2 笛吹きと白蛇むかし、笛の上手な若者がいて、かま わず縁さ出てきて、笛吹いて、いわばま ず、しぼり段で笛吹きして毎日している のだけど。いつのこまいにその白蛇は毎 日そこさ来て、その男は恐っかないとも、 だっでえとも思わねで、その蛇と遊んで いっこんだど。そうすっど親たちは困っ たもんだ、こがえな蛇と遊ぶなて、蛇だっ て知 (し) しゃねで、こりゃ猫でも飼っていて、 その蛇を投げさせんなねなて、かっずげ だな蛇飼って置かんねし、何処さか置い て来いと言わっじゃもんだから、蛇も別 れるの嫌 (や) んだ風にしていたけども、親の いうこと聞いて何処か持って置いてきた そうだ。そしたところが、猫こも二匹黒 いの飼ってもらったもんだけど。それも 育 (おが) って、めんごくて飼って呉っだげんど、 猫よりも蛇の方愛していっかったそうだ もな。そして、まず、あるとき、 「あそこさ投げて来た、なんとしったか」 と行って見んべと思って行ってみて、 笛吹いたところが、どことなく笛の音 すっこんだど。そして、不思議だ、こりゃ なぁ、誰かいたべかと思って、その薮や らさ行ってみたところが、女が立ってい たとこだど。「なえだ、笛も持たねで、笛 ば上手に吹くことなぁ」 「お前に愛さっだ蛇だ」 というごんだどもな。そしてこんどは 行くだいげんども、猫は飼って置かっだ んだし、行ってみっけんど分んない、と だど。そして毎日、まず行って笛吹きしっ たど。そしてあるとき、その蛇にとり憑っ だであんめえかなと、蛇をぶち殺さんな ねと考えっだそうだ。そのうちに蛇は天 さでも飛んで行った気持しったど。そし たらば、蛇は天の星の神さまさ飛んで 行ったそうだ。そうして、 「どうか、おれぁ人間にならせてもらい たい、ぜひ人間とは一つになっだいから、 ならせて呉 (く) ろ」 というもんで、うんと願わっだそうだ。 そうすっど、星の神はわかんないから、 くうかいという者と星の神は話合いした そうだ。そしたば、 「んだらば、一度人間にならせろ」 そして人間にならせて、 「これは、おれは人間だから一つになら せてもらいたい」 と願わっでなもんだから、仕方なしに もらったそうだ。そして互に睦まじく暮 したという話だ。 |
(海老名ちゃう) |
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