34 雷をつかまえた話

 京にスガルという忠義な人いやったど。 スガルという人は天皇さまさ、忠義で勇 気のある偉い人でござって、この人はあ る時、天皇さまさ、お伺いしようと思っ て行ったところが、天皇さまが昼眠して やったとこさ行って、まず、気まり悪(わ)り がって、昼眠しったうちに雷の音がする。
「スガル、あの雷を捕えられっか」
 と、突飛なこと語りやったどな。そし たばスガルは、
「天皇さまにそういう風に言わっでは、 俺は雷を納得させるより他ない。まず 行ってみんべ」
 とて、行って走って山田の道を通って、 畝備山をめがけて、豊田寺というとこま で行って、雷呼ばったそうだな。雷を呼 ばって、
「天皇の仰せで、おれぁ来たどこだ。ま ずお前をつれて来いといわっで…。お前 は天皇さまの仰せだらば、聞かねではい られまい」
 と、天さ響く音立てて、雷様さ言うた ところぁ雷さまは豊田寺のどこで音たて て、
「仰せの通り」
 というもんで、ドダーッと落ちたど。 そしたば、それから神主を呼んで、経(きょう)し て、篭さのせて連れて来たどこだど。
「天皇さま、まず雷を連れて来た」
「こっちさ連れて来い」
 といわっで行ったところが、いや後光 がさして天皇さまなの見らんねがったど。
「神さま、神さま、これからお供えをし て、御馳走をして、それから元通りのど こさ放してこい」
 と、こんどぁいわっだど。それからい ろいろなものを御馳走して、お供えをし て、そして元来た道を、また馬さのって、 篭さのせて行って、寺のどこさ連れて 行って、
「雷よ、ありがとうございました」
 と放してやったど。
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