18 播州赤穂の皿屋敷播州赤穂にええ殿様いて、あるときう んと酒盛しなくてなんなくて、ええ器物 みな出して大々と酒盛りあっかったそう だ。そうしたところが、一枚の皿、一枚・ 二枚・三枚…と数えて、一枚足んねごん だけどなぁ。ある悪い人は、その皿、ぼっこしたも のやら、隠したものやら、とうとう無い くて、正直な御飯(おまま)炊きさ、かぶせらっで、 「おれしない」と言うげんども、そこの その者にさっではぁ、 「何とも罰は罰に何されるもんだか、何 だか生きっだて、ひどい目に合せられん のに相違ない」 どて、ある晩、井戸さ入って死んだご んだずもな、その下女は。そしたば、こ んどはその疑った者が、早く水汲みして 下女さ手使うべと思って、機嫌とりに早 く井戸さ行って水汲みしたところが、重 たいなぁと思ったところ、釣瓶さ、また がって髪ざんざらとさげて、死んでだご んだずも。いやそれから大騒ぎになって、 「こがえに堅い者は、死んでから仕様な いんだし、ええ..あんばいに葬って呉るよ り他ないがんべ」 と、殿様が葬って呉(け)て、何でもかんで も晩になったところが、その下女の部屋 から、パタパタパタと草履をはいて、台 所さ来て、 「一枚、カチャン。二枚、カチャン…九 枚、十枚、ないか」 と、井戸さ、ポーと入る音、かまわず 続くがったど。 そうすっどさぶしくって、みな居らん ね、居らんねと、来る者ない、逃げる者 ばりではぁ、なんと段々に滅びて、播州 赤穂の皿屋敷という名で、殿様も滅びた ど。 |
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