7 鼻高くなれポンポンある男が、稼ぐ嫌いで、何とかして安 泰にうまいもの食いたくて、神様さ願か けて、「どうか、おれぁ、安泰に食えるように させて呉(く)ろ」 と願ったところが、神様は打出の小槌 授けておくやって、 「思い思いにこれで叩くじど、何でも出 きる」 と、こういう風に夜もらったんだど。 枕元さ。 ほんでまず、出はって行ったところぁ、 旦那衆の娘は縁側に陽なたむくれしった ど。そしたところぁ、そこさ、 「鼻おがれポンポン、鼻おがれポンポン」 と言うたれば、ずんずんおがるとこ見 えっけごんだど。ほうしたれば、娘はぶっ つかって、家の中さも入らんねような、 高くなって、 「ああ、おれぁ鼻なじょになったんだか、 見ておくやい、まず、なしてこがえになっ たんだか」 と言うもんで、泣き音聞きつけっこん だど。親達も、 「なえだまず、こげなことになったべま ず、何かに刺っだわけでもなし…」 と、やぁやぁと、ころましい風だけど。 裏かけて聞いてて、 「ほんじゃ、お医者だて言うたたて、分 んね風だけどし、占いなんて言うたって 分んね風だけどし、こがえに鼻治して 呉っこんだらば、なんぼ金など出すけん ど…」 なて、音すっこんだど。そして二日、 三日もよってから、 「鼻治し、鼻治しの妙法」 なてふれて行ったごんだど。そげな話 語ってふれてる者あっから、聞いて来い、 まず。なて召使い出したば、 「鼻なの、何病気でも、何でも治される」 「ほんじゃ、おれ家さ行って呉(け)ろ」 なて、今度は喜んで入って行ったとこ ろぁ、 「広い、誰も入んないで、おればり入っ て、綺麗な座敷さやって呉ろ」 と言わっで、娘と、そこの立派なとこ ろさ入れらっで、何かちょっと語って、 「鼻低くなれ、ポンポン、鼻低くなれポ ンポン」 と言うたれば、段々低くなって、丁度 ええ鼻になって、 「ああ、こんでまず決った」 なて。そうして出して二人で親達のい た前さ行ったら、いや、喜ばっで、御馳 走さっで、銭など「なんぼええ?」なて言 わっで、一生暮すくらいもらった風だど。 それから今度は、 「こがえにええことは、あんがえに面白 く鼻高くなるも、おれも一つ試してみん べ」 と思って、その神様のとこさ行って、 まず蓆を敷いて、涼しいとこで仰向けに なって、 「高くなれ、ポンポン、高くなれ、ポン ポン」 と言うたところが、ずんずん天竺まで も高くなって、今度は天竺で天の川原の 橋拵えさ、ぶっつかったもんだど。そう したところが、こんど、 「珍らしい、人間の鼻でないか」 という音は聞えたそうだ。そして「鼻 つないでおけ」というもんで、橋の杭さ ギリギリとつながっだもんだど。いや病(や)めて病(や) めて仕様ないから、鼻低くなれ、鼻低くなれ」 と言うど、鼻つながっていたもんだか ら、低くなりようなくて、われぁ体ばり ズンズンズンズンと昇って行ったごんだ ずも。そうして今度は温かい太陽の下さ 行ったところぁ、自分が溶けて、ボタボ タと落ちてしまったど。 あまり欲をしないように。 |
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