40 じいさんと若衆 

 よく働くおじいさんいだったど。
「あがえなこと働いて毎日楽しんでいる。 直きにも死ぬも知らないで…」
 おじいさんどこさ話してみっかと、三 人の若衆はいたど。
「おじいさん、おじいさん、なしてほが えに働いて、これから先、食いもさんね もの植えたり、いろいろしてるごんだ。 それよりまいどの話でも考えて楽しんだ 方がええでないか」
「いや、人間が働らくくらいええこと ざぁない。これだっても死んでから、お さんがこうして呉 (け) たほでにええがったと か、いや美味いとか言われるほでに、楽 しみなもんだ。んだからおれぁ一生こう して楽しく働いていて、お前がたなんて 一生、八十になってから、そがえに生き らんねんだから」
 と言うたら、
「若衆にだっても寿命というものは、若 いからと言うて死なないものでない。お れはお前がたさ、まず墓詣りして呉 (け) ねこ ともなかんべ」
 と、おじいさんが言うたど。
 そうしたうちに、その若衆も段々に成 長して、おれはアメリカさ行きたいの、 おれは軍人に行きたいの、木こりになり たいのと言うたど。
 アメリカに行きたいというた者は波止 場で、船ぁ沈没して死ぬ、軍人に行きた いなんて言うのは、名誉の戦死で死ぬ。 一人は木こりになって、木から落ちて死 ぬ。みな三人が死んで、じいさんがお墓 詣りに行って、
「あがえなこと言うたっけが、おれはま だ生きてた。若いたてもこういう風に なっじだなぁ」
 と言うたことあるから、やっぱし…。
海老名ちゃう
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