34 狐女房殿様から山狩りをしろと、信太が森と いうところに行ったところが、狐ぁいた。狐は見ない振りして、別なとこさあえ べと言うと、その狐のところを助けて、 別なところさ行って狩したところが、あ る日、そのヤスナという人の許嫁が一丁 前になったから来たとこだと、ええ女が 来て、ヤスナのところさ来て、家さ入っ て、子ども生んで、働いていたところが、 ある日また一人前になった本当の許嫁が 親に送らっで来たど。なんだかヤスナど こさ女ぁいた。不思議なごんだと思って、 どっちにも同じ娘だっだそうだ。そして 先に来た女は、 「いや、おれは居るべきでない、おれは 助けらっだ狐だ。恩返しに来たのだから、 すぐに行くべと思っていたげんども、自 然永々になってしまった。子どもまで出 来たげんど、おれは此処にいらんね」 と思って、信太が森さ、 会いたくば 尋ね来てみろ 信太が森 という字を障子さ書いて逃げて行った ど。そうして、子どもは同じおっかさだ げんども、乳もないげれば、泣いて泣い て仕様ないもんだから、その狐をたずね て、信太が森さ一夜連 (せ) て行って姿見せて から、あきらめさせんべと思って、その 子ども背負って行ったところが、まだ同 じおっかさになって、乳を与えたりして、 あきらめるように、元の姿になって呉 (く) ろ と頼んだところぁ、狐の姿になって三度 ぴんぴんとはねて立って行った。 そうすっど、子どもは、恐っかない、 と言って、 「お母さんでない」 と、あきらめて帰って来たど。生命助 けてもらった恩返しだったど |
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