30 馬と犬 

 あるところに、馬と犬つれて、ある男 が散歩して、きれいな牧場さ行って、
「これは、おれは昼眠すっから、お前が たは自由に遊べ」
 と言うて、自分が昼眠しったところが、 馬は喜んで、草あるもんだから、一生懸 命で食べてる。犬は腹減らして、馬が背 中に背負ってだ食物を、
「膝まづくと取られっから、膝まいて、 おれどさ食せろ」
 と言うたどころぁ、
「いや、主人が目覚ますど、みんなで食 れっから主人が目覚ますまで、こらえて いろ」
 そんでも腹へって腹へって仕方ないげ んども、取って食うようは出来ないんだ し、一生懸命で馬ばり食ってだど。
 そのうちに狼ぁ来て、馬は、
「狼来たから吠えて呉ろ」
 と、馬が犬さ言うたげんども、
「主人が起るまで待 (ま) ちろ」
 と、こんど犬が言うたげんども、主人 が起きねんだし、狼にあちこち噛 (か) ぶづ がっで、苦しんだど。そしたらば、犬の 言うには、
「分けて食ったり、いろいろすっど、お 互に助け合って、そんがえに苦しみすっ こどなかったべ」
 と言わっだべ。
海老名ちゃう
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