27 くいごこむかしおじいさんとおばぁさんの、子ども持 たないで、正直に暮しったどこじだな。そのおじいさんとおばぁさんが毎日働 いて、おばぁさんが洗濯に川さ行ったと ころが、赤い小箱と白い小箱が流っで来 て、 赤い小箱こっちゃ来い 白い小箱あっちゃ行げ と言うたところが、白い小箱は泣きな き別な方さ行ぐ、赤い小箱はおばぁさん のどこさ来て、それを拾って開けてみた らば、めんごいくいごこ入っていて、目 覚して見る目などしていたど。 「誰ぁこげなめんごいの流して寄越した んだべ」 と思って、子どももいねがら、これを おがすと思って、家さ連 (せ) て来て、うまい ものを食せて、何好きだというと、小豆 飯さ魚かけて好きだなんていうように、 二人でおがしったところが、ある日お天 気のええとき、車ひっぱって来て、 じんつぁものれクンクンクン ばんさものれクンクンクン かますもつけろ 鍬もつけろ と言うて、車を見て、 「疲れる (こわい) べから、車さのんねえで行くか ら」 と言うたげんども、 「ええからのれ、クンクンクン」 なんて言わっで、車さのったところが どこということなく、山さ、じんつぁと ばんちゃのせて、くいごこぁ行ったば、 広いとってもええどこさつれて行かっで、 そして、 「じんつぁも降 (おち) ろクンクンクン、ばん ちゃも降ろクンクンクン」 と言わっで、降 (おち) て一服しったところが、 鼻でクンクンクンと嗅いで、 「ここ掘れ、クンクンクン、ここ掘れ、 クンクンクン」 と言うから、掘ってみたば、いや宝物・ 金銀ざくざくと出はったど。そいつかま すさ入っで、 「向うも掘れ」 というので掘ってみたば、美味いもの でも着物でも出来て、喜んでかますさつ けて、 「また、のれクンクンクン」 と言わっで、 「今度はこわいがんべから、おらだひい て行んから」 と言うても、そんでも聞かないで、の れのれと言うからのったところぁ、カラ カラと疲れ気もなく、家さ帰って来て、 そして、 「なんぼこわがったべ」 なんて、足なのお湯でみな洗って呉 (け) て、 「ほんじゃ、寝てんなだぞぁ」 なんて寝せてるうちに、隣の火もらい ばばの稼ぎたくないばさま来て、 「いやいや、こっちの家では、なんと何 をしたんだか、福しくなっていた。その 話聞かせて呉 (く) ろ」 「いや、おれのくいごこはこういう風な ことで、山さ連 (せ) て行かっで、こうだ」 「ほんじゃ、まず」 と、火ももらわねで、 「まず、隣ではくいごこは宝物出して来 て呉 (け) っじゃど」 「んじゃ、あいつ借っで来らんなね」 「そのくいごこ貸せ」 「いや、貸さんね。なんぼくたびっだべ から、寝せっだどこだから、貸んね」 貸さんねと言うのを、びりびりと連 (せ) て 行って、のれとも言わねの、のって尻叩 (は) た き叩たき、山さ行ったところ、掘れとも 言わんねな、掘ったところぁ、とんでも ない臭いものなどばり出きて来たから、 怒っ (ごしゃえ) て、 「隣さばり宝物さずけて、おらだどこさ、 こがえなものさずける。生かしておかん ね」 と言うもんで、鍬で頭叩いて、キャン キャンと泣いて死んだのを、そこさ埋め て、 「松の木一本も立てて行くが…」 と言って、松の木そこさ植えて帰って 来た。 まずくいご寄越さねもんだから、行っ てみたところぁ、 「そっけなくいごなど殺して埋めて来た。 松の木一本立てて来たから、分るべ」 「こうした訳だど、じいさん」 と二人は泣き泣き団子を持 (たが) って行っ てみたところぁ、まず、その木はおがっ ておがって、 「死んでからまで、おらだどこ、こうし て呉れっか、ほんじゃ、こいつでスルス でも拵えて残して置くか」 と言うもんで、ツルコン・マルコンと 切って、スルスを拵えて、ひいてみたば、 またじんつぁ前さ、金 (かね) 。ばんさ前さ銭 (ぜに) 。 ざくざくざくと落ちて、 「死んでからまで、こうしてくれっか」 と言うもんで、喜んで、また来てその 話したら、隣ではまた、 「そのスルス貸せ」 と言うもんで、ビリビリ持って行って 見たば、またまずいものなどばり出来た もんだから、 「こっげなもの」 と割って焚いて、 「まだよこさねから、行ってみっかなぁ、 何かしったであんまいか」 とて、行ってみたらば、 「おらだどこさ、どこまで仇すっから、 そっけなもの焚いてしまった」 「ほんじゃ、灰でもええから持って行く べ」 と。 「センチ(便所)の陰さ置いっださ」 と言うような塩梅で、その灰ばりも 貰って行くべと、泣き泣き灰をフゴさ 入っで貰って来る途中で、灰が吹飛んで 行って、枯木さ花咲いたど。 「これはこれは見事だ。灰になってから も、こういう風に、おらだどこ助けっじ だ…」 と思って、その話したど。 その話は殿様さ聞えて、 「枯木さ花咲かせるじいさんがいたどか ら、咲かせてみろ」 と言わっで、 あやはちゅうちゅう 黄金 さらさら チチン ポン パラリーン と、灰をまいたところぁ、ほんに見事 な花咲いてみんなに手叩 (はた) かっで、喜ばれ てたくさんの御褒美もらったど。 その話、また隣で聞いて、灰いっぱい 持 (たが) って行って、また殿様さ、来いとも言 わんねのさ行って、 「そこにいたのは誰だ」 と、とがめらっだところが、 「おれは花咲じじいだ」 「ほんじゃ、こっちさ来て咲かせてみろ」 と言うて、灰もって あやはちゅうちゅう 黄金 さらさら と蒔いたところが、みんなの眼さ灰ぁ 入って、 「いや、にせものだ。にせものだから、 これを牢さ入れろ」 なんて言わっで、牢さ入れらっだど。 んだから稼ぎもしないで人のことばりう らやましくて、そうすっじど、罰でそう いった目に合うし、正直なじいさん、ばぁ さんがそういう風に授 (さず) いて、金でも何で も授くもんだから、心掛けは大事だど。 |
海老名ちゃう |
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