25 瓜姫子と天邪鬼 

 おじいさんとおばぁさんが、子ども持 たねくて一生懸命で働いて、瓜をいっぱ い蒔いて、ばば瓜熟んだ頃だと思って、 ばぁさんがハケゴ背負って来たところが、 めんごい子どもは、瓜畑ぐるんぐるんと 走って廻る。
「こらこら、お前だ、瓜はそういう風に して上がっじど、蔓はわかんなくなるか ら、あがんなよ」
 と、こう言うても聞かないで騒ぐど。 何とも仕様ないから、瓜見に行ったとこ ろぁ、ばば瓜は二つに割っで、そこから 出来た子どもだど。んだもんだから、そ いつをハケゴさ入っで、
「おじいさん、おらだ子ども持たないが ために、こりゃ、授けておくやったべか ら、これをおがして…、何と名付 (つ) けたら ええがんべ」
「瓜からできたから、瓜姫子と名付 (つ) けた らええがんべ」
 と、その子どもを瓜姫子と名付けて、
「何好きだ」
 と、小豆飯さ魚 (とと) かけてか、なんて言う もんだから、魚買って来て食 (か) せたらば、 ずんずんおがって機織り好きな子どもで、 おばぁさんが機 (はた) 教えたところが、機織り、 とうししていた。またトコロ好きでも あったど。んだから、
「トコロ掘って呉れっから、まず天邪鬼 というだっでえ者来っから、天邪鬼にこ この戸ばり開けんなよ」
 と言わっで、そして、
「行ってごんざえ」
 なんて戸を閉めていたところぁ、やっ ぱし天邪鬼は来て、
「瓜姫子、なんぼ機織った」
「少ししか織んね」
「少し開けてみせろ」
「いやいや、これはじいさん、ばぁさん に開けてみせんなよと言わっだもんだか ら、開けらんね」
「ほんじゃ、俺はここの戸破って入って 行くぞ」
 と、こう言わっだもんだから、瓜姫子 は仕方なく少し開けた。今度は手入るく らい…。いや顔入るくらい…、と言わっ で、少しずつ開けたところぁ、ぐいっと 開けて来て、瓜姫子を殺して、瓜姫子の 着物をきて、瓜姫子になって、機織りしっ たところぁ、じいさんばぁさんが山から 帰って来て、足洗っていたとこさ、きれ いな鳥が裏の方から飛んで来て、
   瓜姫子ののり機(はた)さ
   天邪鬼ぁぶちのって
   ギーゴ・パテン
 なんて、三度も言って、不思議なごん だなと思って、何もなかったかなと、家 さ入ってわらわらと、トコロを煮て食せ たところ、いつでも瓜姫子は柔しい言葉 掛けっけんども、今日はそげなこともな い。煮たから食 (く) えと言うたところぁ、瓜 姫子はうまいごんだの、こうだのと話し かけながら、食うなだげんども、今日は ガリガリガリと毛も皮もむかないで皆食 う。不思議なごんだな。
「毛ばりむいて食うんだ」
 と言うたところが、
   毛ぁ毛の薬
   皮ぁ皮の薬
 と言うもんで、今度は瓜姫子でなく なって天邪鬼になって逃げて行ったど。 そうすっど、あれは後の方から来たのは、 瓜姫子だべと思って行ってみたところぁ、 裸にさっで、血まみれになって、カヤさ 丸まって殺さっでいだど。んだから、今 もって、瓜姫子の血で、カヤの穂の下は 赤くなっている。
海老名ちゃう
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