18 猿むかし 

 茸、たんと出てきてないもんだから、 四方見たところが、この木で作った小屋こ みたいなとこ見つけたど。そしてそこさ 行って見たところぁ、猿の家だったど。
「いやいや、とんだ猿の家だから、見付 けらんねように、この上さあがって、何 しったもんだか、見っだらええがんべ」
 と。そうしたところは、隅の方さ、ぶ どう酒造ってあるから、降りて来てぶど う酒飲んで、皆飲んでは悪がんべから、 少し残して小便たれで置いっだど。そし てそいつかましていたとこさ来て、猿ぁ 飲んだど。
 猿の祝儀のごんだったど。そしたらば、 あっちからお仲人さま、こっちから赤い 面 (つら) さ、樫の葉の衣裳など着て、そこさ 入って来たど。
「この酒、たんとええ出来でなかった」
 なんて言うげんども、みな酒悪く酔え て眠てしまったどこさ、ゆさゆさとして、 皆殺して、
「こいつ、みな売ったら、茸よりたんと ええ銭になる」
 というもんで、そいつを、
「血の薬、血の薬」
 というもんで、西山から持ってきて、 猿なんざ見たことないもんだから、
「猿売りぁ来た」
 と言うもんで、たちまち売っで、大変 面白いがったという話。
海老名ちゃう
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