13 股大根

  (秋行というものは、春から秋までつ とめて働いて、秋にとり入れしている うちに、着物でも何
 でも切れるもんだ。 そうすっじど、着物を一杯洗って持っ て行って、まずとれた米を、マメで働い
 たということで先の親さも報告して、 進ぜて、その時洗濯でも何でもして来て よいということで、
 長く泊ったもんだ)
 お大黒さまとお恵比須さまざぁ、兄弟 でござって、一番と総領がお大黒さまで、 何か国に悶着があって、大国主命となっ たのはそれからだというごんだど。
 大国主命は餅のうんと好きな神さま だったど。そして富士山を寄こせと外国 に言わっで、確か何かあるべとて、ある 国さ行く時、一番の総領をやって、途中 にして、大根洗いしていた女いたったど。
 大根というのは、毒消しだから、貰い たいと思って、
「大根一本呉れてくろ」
 と言うたところが、
「いや、俺ぁ何本と渡さっだ大根だほで に、あげる訳にはいかない」
 と。情けないもんだなぁと思って、そ の着物なの木葉 (こっぱ) のようだと言うことあん だ、それに、女は乱れのない着物きて大 根洗いしったというごんだ。そんでも貴 婦人で、とても重々しいところぁった女 であったそうだ。
 それからよほど行ったところが、おお と呼ばるもんだから、後ろを見たところ が、
「股大根になったの、一本が一本、ここ 割ったたて、やっぱり一本だ。んだから 一本割ってきたから、差し上げる」
 と言わっで、有難く持って行ったら、 案の定餅をいっぱい出さっだ。その餅を 大根を食っては食い、そしてこのいっぱ いの餅食ねと分んねと言わっで、大根噛 りかじり餅を大根でこなして談判を終 (おや) して来たど。
 家さ帰って話したら、何ごとも望み通 りにさせるというから、俺は一番大きな お宮を欲しいと、そしてそのオカタとい うものは、俺がこうした訳で助けらっ じゃんだから、その女を欲しいと。そし て堅く勤めっだったもんだど。そして、 出雲大社を一番目のがもらって、二番目 のは京都のお宮を建ててもらって別れた んだど。
 んだから、その会議には一番大きいお 宮さ、その神さまだは、十月二十九日(刈 上げ餅の日)の餅を「神上げ餅」と言う たもんだど。また神さまが会議に出雲大 社にござる、その月を「神無月」という もんだど。お大黒さまは釣好きでござっ て、自分の作ったもんで、うんと蓄えの ええ神さまだから、お大黒さまとお恵比 須さまは兄弟仲よくして、とてもええオ カタで、助け合いで、仕合せに送ったど し。んだから、身成りや何や、考えねっ たてええから、オカタのしっかりなの持 たねくてなんねど。
  (十月二十九日は海も荒れて、竜宮か らも三宝に竜の恰好しったのを、お供 えに上がるもんだけ
 ど。そいつが上が りさえもすっど荒れたのが静まるもん だったど)
海老名ちゃう
>>牛方と山姥 目次へ