12 狐むかし 二話 

(一)
 晦日と盆ばりだったんだなっし。先に は「通い」というもんで、かまわず魚 (いさば) 屋 でも酒屋でも払うのは…。
 そん時に、荒砥に二軒ばりしか魚屋な くて、そこの仲町に魚屋から買って来て、 払うじど、酒御馳走になって、正月買物 してくるもんだから、のんべに助けんな ねがったど。ヤンヤンと助けに四五人で 行ったもんだどな。そうすっじど、背負っ て来た荷物背中から降ろして、
「俺ぁ、払って来たの、余計なものなど 持 (たが) って行げ」
 なんて、ヤンヤンと言ってっかったど。 そうすっど、狐ははぐったり、持ったり したど。そして喧嘩したもんだったど。 そして気ィついてから帰さんなねがった ど。

(二)
 やっぱし、晩方など、何か持ってなど 歩くと、狐に騙さっで、持って行って見っ じど、何も入ってね。何処さ落として来 たんだかと、のんべに言わんなねがった ど。そうすっじど、夜になったたて、提 灯など点けて歩かんねがったど。何かツ ウツウと草ぶくさ喰付くような気持すっ かったもんだど。提灯持 (たが) くじど…。狐が クェンクェンと提灯を上げんのだど。そ うすっじど、提灯が手から落ちて転ぶ がったど。そしてまた灯つけて、何処だ べと思って見ると、提灯のローソクざぁ、 無くなっているもんだけど。何とも仕様 ないから、狐退治さんなねと、みんな集 まって、狐というものは、油は好きだ。 油をいっぱい、そちこちさ匂いさせてお らだ大勢だもの、狐ぐらい、なじょかさ れんべ。
 ある時、みんなで火焚いていたそうだ。 そしたところが、どこからなんだか、墨 染めの衣着て、錫杖ついで、お寺さま来 て、
「何だ、お前方、何しったどこだ」
 そうしたところ、
「とにかく、困ったもんだ。狐に騙さっ で、おらだ狐退治さんなねと思っていた ところだ」
「俺は決して殺生ざぁするもんでないぞ。 俺ぁそっちこっちさ、そういう風に廻っ て、狐さなど話語って教えっど、狐ぁ出 なくなるもんだから、俺ぁ引受けっから、 お前ら帰れ、お前だいるじど、狐ぁ来ね がら…」
 と言わっで、
「何なんだか、お和尚さま、何さっでい だもんだか、まず」
 なんて、朝げ行ってみたところぁ、狐 の大きいの、なんぼ古いのなんだか、み な油舐めて油に酔えて寝て、死んだよう になっていだっけど。それを殺して、村 中かつねて、足と手つないで、みな狐見 せしたったど。狐も人にかなわねくて…。
海老名ちゃう
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