93 山木家

 亀岡に山木の姓は多い。山木家の惣本家は次右ヱ門さんである。往古同家の前に大きいサイカチがあった。幾代も続いたサイカチと伝えられる。その大きさは大人で四抱えもあったと伝えられる。また洞があって、蛇は巣くって、小春日和の日などは幾匹も枝から枝へ這って行くといった。同家の屋舗に稲荷を祀った社があった。その霊現もまた新たであった。夜になると、使いものの狐の泣き声がときどきしたという。ことに変事があるとよく泣声があった。亀岡には数回大火があったが、そのいずれの時でも幾夜となく幾回となくその叫び声をきいたと伝えられた。今ですら変事があると、ときどき叫声をきくことがあるという。
(亀岡)
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