56 露藤出来沼の蛇

 近年のこと、数日大雨降となり川があちこちで溢れてその跡に巨大な沼になった。これが出来沼である。その辺の農民、夢の中でお告げがあり、その沼にくぐって自然金を取り出せば、大いに富むというので、その沼に金をとって富豪となった。近隣の者は大いに疑って、隣の主人が夜な夜なその家の様子をうかがうと、夜更けてから外から帰って金を取り出している。灯で見るとぬれた金である。次の日に行って「おまえはどこから金をもって来たのか」と聞くと、「昨日始めて三丁畑を掘っていると金が出たのだ」という。その後何日か心つけてうかがっていると、彼は出来沼に入って金塊をとり帰って来るのであった。隣の夫もそれを知って次の日に出来沼に行って金塊を得た。すでに人に知られたので、藁で蛇を作り金のあるほとりに沈めておいた。隣の夫がまた金をとろうと水にくぐると、彼の蛇は一口に呑んでしまおうとする。自分が作った藁の蛇が活きた本当の蛇になってしまっている。その後、この蛇は沼の主となってしまったという。今は誰も行かなくなったという。
(露藤)
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