48 彦左ヱ門さん河童を見る

 七十年ばかり前のこと、小佐家の彦左ヱ門さん、天王川へやなをかけたことがあった。小屋をかけて泊ることもあるが、連日通っていた。その晩は暗い晩であった。今しも牛沼から草葉道をやって来ると二尺ばかりの子どもがちょこちょこと歩んで行く。この夜更けに不思議なことと呼べど答えがない。追かければ走る、止まれば止まる。彦左ヱ門さんこれは兼ねて聞く河童ならんとよく見れば、頭は皿様のもの冠り髪はざらりと下り手も足も細い。畜生奴と傍から石を拾って打ちつけたら、川の中へと入ってしまった。その後もこうした事があった。すると彦左ヱ門腰から煙草入れを出して煙草をふかすのであった。すると萱の中へ入ったり川の中へ入るのであった。入生田の某も夜こうしたことがあったが、追いつめられたら逃げて川へ入ったが、いたちであるまいかといった。
(露藤)
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