47 小佐家彦惣死人を見る

 小佐家部落の彦惣さんは彦左ヱ門さんの人である。珍らしい働き者であった。よく働いて彦左ヱ門さんの礎を固めた。ある年のこと、大旱りで久しく雨を見なかった。ある夜のこと慈雨は降って来たので思わず口ずさむ。
   大旱り心よく寝る雨の音
 ある夜のこと、彦惣さん上舘へ行かんとしたら、前の方から白装束をつけた女に会った。白い着物を着るとはあまりに不思議と、思わず後をふりかえって見たら、その顔の青いこと、しかもそれは赤田部落の某さんであった。しかもその某は病気で久しく床にあったといった。思わず走ってふりかえって見ると、その女はどこへやら、かき消すごとくに見えなくなった。急に恐ろしくなり、一散に我家へ帰った。翌日のこと、赤田の某さんが死んだという報に接した。
(露藤)
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