42 喜兵衛さん狐を殺す

 露藤の喜兵衛さん、上舘の三王さん一発のもとで殺してしまった。狐ではその祟りがおそろしいと言ったが気にとめず三王さんは皮を剥いで狐汁にして食うのでびっくりしたという。ところがその夜のこと、喜兵衛さんの門口に来て戸を引っかく音がする。耳をすますとその数五六匹、騒々しいことたとえようもない。こうして夜が明けてみると、爪の跡が一面、喜兵衛さんも一驚していた。また翌晩になったところ、同時刻に狐がやって来ていたずらする末、喜兵衛さんも一計を案じ三晩目のこと、また狐がまた来たので、門口へ行った。「畜生、おれが殺したのではない、上舘の三王さんが殺したのだぞ」と再三言ったら、一匹去り、二匹去り、以来こなくなった。しかし三王さんはいたずらされてほとほと困却したという。
(露藤)
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