38 狸をとるある年の秋、夜になると何者かが鶏にかかってならない。鶏の異様な叫び声に家人が行ってみると、一方の囲を破って鶏一羽をくわえて去った。翌日また一羽と、こうして次から次へと六七羽とられてしまった。一晩寝ずに夜番しても捕えてやろうと、喜兵衛さんは待ちかまえたところ、またもや味をしめて、犬にしては小さい、猫にしては大きい、足の短かい一匹の獣がノソノソやって来て、鶏小屋に忍び入った。喜兵衛さんは物かげにかくれて、ただ一打ちに殺してよく見れば狸であった。こうして捕った狸は二朱で売ったという。 |
(露藤) |
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