13 鎮守さま台門の杉

 明治の初年までは、鎮守さまの百二十間の台門もうっそうたる老樹で暗いほどであった。これが明治十三・四年の水論のとき、金策に窮して売却した。落札は安部三九郎さんがしたが、これについては以上のような内幕があった。米沢市の材木屋が来て、善兵衛さんに時価一千円というたものだが、一千五百円と入札するから、是非心配してもらいたいといったのであった。惣代宅で入札となった時と、まさに時間も終ろうというとき、あわただしく三九郎が来て、一千五百一円と入札し、一円の差で三九郎さんに落札となった。庄右ヱ門さんと三九郎さんは親族関係、善兵衛さんの話を密かに三九郎さんに告げたのであった。しかし全盛をうたわれた三九郎さんは、この杉を落札してから財産をなくしたといわれる。
 木を伐採中に三九郎さんの孫を殺してしまった。人々は神罰であろうと噂し合ったという。
(露藤)
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