113 うそ上手の半四郎さん半四郎さんの家は角田谷地庄右ヱ門さんの北にあった。同人は働らきは嫌いだが、うそ語りの上手な人であった。宝岳寺の沖田和尚さん、角田谷地の権蔵さん、上舘の庵子叔父と共に、露藤にいらざる者と歌われた一人である。歌ったのは目明しであったという。 露藤にいらざるものは四人あり 梅はち和尚に庵子なりけり 梅蔵は彦右ヱ門または半四郎、和尚は沖田和尚、庵子は庵子叔父である。半四郎さんはよくうそを言った。あるときのこと、小林平左ヱ門さん宅の付近を通る半四郎さんを呼び止めて「貴様はうそは上手だが、一つうそを語ってみよ」と言えば、半四郎何事か忙がしい様子、「親方、うそどころの騒ぎでない、今三郎右ヱ門の老婆は倒れて平間医者さんのところへ行くところだ」とて急ぎ足で田中の方さして行った。驚いたのは平左ヱ門さん、いそぎ家に帰り妻に語って、「今朝、三郎右ヱ門さんへ行ったとき、婆さんは何事もなかったが、今半四郎に聞けば、にわかに倒れたとのこと、見舞いに行かねばならぬ」とて、着物を着代えて見舞いの品を持参して行ってみたら、何のこと、病気の筈の同人は家の庭で庭掃きをしておった。半四郎のうそであった。 |
(露藤) |
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