108 六道辻という所

 六道辻は六本に道が分れているところをいう。白髭明神の北がそれである。六七十年も昔のこと、吉兵ヱさんが米沢へ用事があって帰りはあまりに遅くなった。この辺に差しかかったら一面の露、もやがかかって一間先も見えない、家の方角も分らない。しばし思案していると反対の方から一人の女がやって来た。この夜更けに不思議なことと思いながら、道の傍にたたずんでいると、吉兵ヱさんを見つけたのかどうかスレスレに行きちがって行ってしまった。去った後に衿に冷水をあびせられたようにゾウとした。下からのぞいたら、足がなかったという。
(露藤)
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