106 角田谷地の孫蔵さん露藤の西角田谷地に孫蔵さんがおった。新家で非常な働き者、壮年の頃相馬通いをしていた。この辺のものを背負って、相馬から魚(いさば)類をもって来た。ある年のこと、一背の商いものを背負って和田上の峠へと差しかかった折から峠の上を一匹の鷲が輪をかいていたかと思うと、何を見たか急に舞い下りた。林の中には野猿群がいて、それと斗うのを見ていた。そのうち猿の二三匹が鷲の爪にかけられて叫声をあげたので、孫蔵さんはそのむごたらしさに傍の石を拾ってなげつけた。残された猿の一匹が股をさかれて苦しんでいるのを見て、孫蔵さんは薬をつけて手拭でしばってやった。 こうしたことから以後、この峠にかかるといつも二三匹の猿が前になり後になり、孫蔵さんを守るかのようにしてくれるという。 |
(露藤) |
>>つゆふじの伝説 目次へ |