82 大蛇の石

 むかしむかし、二井宿村さ行ぐ途中に、三軒屋があったずま。その三軒の家にはきれいな娘が、一軒目さ二人、二軒目さ一人、三軒目さ四人いだんだけど。
 ところがその家に毎年「娘食だい、娘食だい」て言うて大蛇が出てきては、一人ずつ生き呑みすんなだど。
 今年は三軒目が当番になっていたんだけどはぁ。ほして大蛇出てきて、
「明日まで娘ば家の前さ出して置け」
 大きな口開けて入って行ったんだど。そこで三軒目の親子は泣いて泣いて、泣いでいだんだけどはぁ。ほこさ何だか神さまみたいなやって来て、ほのわけ聞いて、
「んだらば助けてやっから、木で刀作ってこい」
 ほして、その家では一生懸命刀を作って、次の日また神さまやって来て、
「ヤキメシ作って来てもらいたい」
 て、ヤキメシ作って行ったところ、神さま、
「んでは退治に行ってくる」
 て、出掛けたんだど。それからまもなく山のくずれる大きな音したんだど。大山鳴動ていうか、三軒目の親子は何事だと思って、表さ出はってみたれば、神さま、ヤキメシ噛りながら、
「大蛇退治してきた」
 て帰って来たんだど。
「どうやって退治したべっす」
 て聞いてみたれば、なんでも、
「この刀で、固くてでっかい石をバッサリ切ってきたら、ギャーッという手答えあった」
 て言うて、結局大蛇が石にさっでしまったんだけど。そしてその石、木刀で切らっだもんだから、それから大蛇出なくなってしまったんだどはぁ。その神さまの切った石は高畠町の蛭沢(びるさわ)ていうところにあっど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
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