78 炭焼き藤太

 むかしむかし、ある町に、けちんぼな大金持がいだんだけど。倉さいっぱい銭大判小判どっさり積んで、ところ が近ごろになって、おかしなことが起ったんだど。その銭が少しずつ減って行って、何だかおかしいていうわけで、さんざんぱらそのおかみさんさ小言をいうたんだど。
「お前使うんねが、銭足んねぞ。どさ行った」
 ほしたれば、ある晩のこと、ほのおかみさんが目ちょぇっと覚ましてみたればどっからか話声が聞えてくるんだけど。
「たしかに、こりゃ倉の方からだ」
 ほしたれば、
「こだな家さいるの嫌(や)んだくなったから、この家出はって行くべぁ。落付く先はどこにすんべなぁ。この山奥に、炭焼きの藤太という人がいる。せっせとよく稼ぐ男で、正直者だ。今に長者さまになんべ。ほこさ行くべはぁ」
 て、大判小判が話していだんだど。おかみさんがびっくりして、次の日、炭焼きの藤太さ、山奥さ尋ねて行ったんだど。ほして炭焼きの竃の裏手さ行って、藤太が木切っていたどさ行って、
「もしもし、あなたが藤太さんだなっす」
 て言うど。
「山の中で日が暮れたので、一晩泊めてけらっしゃい」
 て頼んだんだど。したれば藤太は、
「あぁ、ええっだな。ええっだな。こっちゃござっしゃい」
 て小屋さ連れて来て、
「まず、粗食だで悪(わ)れげんども」
 ていうわけで、夕食出して、おかみさんは大へんもてなしたんだど。ほして、おかみさんが喜んで、一晩ほこさ御厄介になることにして、夜中に打ちあけ話をしたんだど。旦那の大金持のけちんぼの話、夕(ゆん)べな倉の中で大判小判が話語った話、こいつみな藤太さ語ってしまったんだど。ほしたれば藤太さんは急にカンラカラカラと笑い出して、
「ほだな光るものの金なていうな、小屋の裏さいっぱい撒らばってるんだ。行って見らっしゃい」
 次の朝げ、おかみさんが早く起きて行ってみたれば、なるほど小金がどっさり山のようになって出てあったんだけど。その中さ大判も小判も混じってだんだけど。
「これは早速、村の貧乏人にもって行って、めぐんでやんべ」
 て、藤太に話したんだど。ほして村さ降っで来て、困っている人さ、みなめぐんでやったんだど。村人から、
「藤太の旦那さま、藤太の旦那さま」
 て言(や)っで、すばらしい家も建てて、そのおかみさんと藤太が一緒になったんだけどはぁ。今でも宝沢には藤太屋敷ていうな残っていんな、そのことなんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「炭焼長者」一四九)
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