62 子授けの神

 むかしとんとんあったずま。あるどこに、子ども授からなくて子ども授からなくて、「何とか子ども授かっどこないべか」ていう人いだっけど。
 福島県の子育て観音ていうどころさ行くと、子ども授かる。そこは有難(ありがた)いもんだ。まずそこの神主さまお詣りすっどお経上げてるうちに、段々御帛(ごへい)がそよそよそよいで来る。その御帛がそよいで来っど必ず子ども授かる。こういう風に聞いて喜んでほこさ行って、何がしかのお賽銭上げてお詣りしてもらったんだど。
 ところが今までびくともしなかった御帛がだんだん浮き上って来たけぁ、カチャカチャ、カチャカチャ動き始めた。
「それ、お客さん、拝まっしゃい」て言うわけで、一生懸命拝んだ。それまではよかったげんど、一陣の風がぱあっと吹いて来たれば、その御帛入った花瓶がひっくり返った。そうしたれば中からドジョウ、ずよずよと出はってきた。
 結局、種子と仕掛けがそこにあったんだど。
 ほの冷たい水のうちは、ドジョウはちょとしていっけんども、火でどんどん焚かれっどお経上げたら、そいつが動くなでなくて、火焚かっで熱くなっから、ドジョウさわいで、その御帛が動くなだけど。
 んだから、迷信なていうのは、決してあまり深入りするもんでないど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>烏呑爺 目次へ