48 貧乏の神と福の神

 むかしとんとんあったずま。
 ある部落さ、とっても口の悪い皮肉屋いだけど。なんでかんで皮肉言って皮肉言って困る男いだんだけど。
 ところがある日、下の方から友だちは、パカパカ、パカパカて来た。
「どさ行くどこだい、貧乏の神」
 て言うたんだど。ほしたれば、
「いやぁ、お前の家さ行(い)んかど思って」
「さぁさぁ、さぁさぁ、おれぁまたいつもの癖出してしまった。悪いこと言うてしまった。こりゃ。友だちとか何とかて言えばええがったげんど、貧乏の神なて言うてしまった。したれば、どこさ行ぐなて言うたれば、言うこと事欠いて、おらえさ行ぐなて言うたっだま。こりゃ。仕方ない」
 て、帰り用達して来たらば、また行き会った。こんどぁ悪れごと言(や)ねべと思って、
「おいおい、どっから出はって来た、福の神」
 て言うた。したれば、
「にさ家(え)から出はって来た」
 て言わっだ。したれば、その家ぁ、何だか、だんだえ左前になった。んだからあんまり皮肉なことばり言(や)んねもんだて。昔の人ぁ言うたもんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。

(集成「貧乏神」二〇一)
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