18 三匹の牛(べこ)

 まいど、牛(べこ)方いたったと。そいつは丁度山中から、割木などつけたり、米など大根・蕪などつけて、越後の浜辺さ売り行くのだったと。そしてそのうちで、三匹牛飼っていだったと。その内の一匹の牛は賢こくて気のきいたので、うんと真面目な牛だったと。人さえも朝げ行くじどはぁ、牛ざぁ寝てるもんだけど。そいつはヒョイと起きて来てはぁ、口ちゃんと突(つ)出して、牛方どさ肩さなどゆすこくったり、咽すこぐったりして、愛想していっかったと。それから二番目の牛は、〝叩いても罪にはならぬ牛の尻″なて、一つぐらい鞭で叩くと、ヒョコイッと起きっかったと。そいつは当り前の牛だったと。
 それからもう一匹の牛ざぁ、横着で横着で仕様ないもんだから、細(ほそ)こい木の鞭の根っこの方さ、?(かね)をつけて置くがったと。?の先はキリみたいに尖(と)げておくがったと。引ぱだいでも起きるもんでない、尻の辺り無理無理キリで刺さねと、起きね牛だったと。
 朝げ飼食せて、牛方行くと、一番賢こい牛はヒョイと起きて来るもんだから、めんごくて、ワラワラ、たてごかけて、めぐら着せて米など味噌など美味いもの食せて、荷物も軽いもの食せて行くがったと。二番目の牛は当り前だから、菜っ葉・大根葉などつけて行くがったと。そして三番目の牛はあんまり横着だから、いつでも薪ものなどばり背負いづらいもの一杯重たいものつけて行くがったと。
 一番目の牛はつけてくれっど、越後の町さ、ちゃかちゃかと行くがったと。二番目の牛は叩くとこいつも歩(あ)いで行くがったと。三番目の牛は、家から町まで、尻さキリ刺し通しみたいにして。んだから、尻の辺りはまるで傷だらけで行くがったと。そして越後の町でも、薪木はないもんだし、青っ葉はないもんだし、皆待っていっかったと。そして女衆はうまい残り物など、待って出しておくがったと。そして一番目の牛は行くより早く食え食えと言われるもんだから、美味いどこばり食れっかったと。それから食い残りみたいな、二番目の牛が行って食うがったと。三番目の牛なんて食うに食んねものばり、僅かほかしか残っていながったと。
ほだから牛だて馬だって人だって同じだ。するだけのことはさせられるもんだし、人よりチャッチャッとするじど、みんなにめんごがらっで、美味いものなど余計に食せらっで、そして荷物などもええなばり背負わせられるもんだから人ざぁ、あんまり横着たけるもんでないもんだけと。とーびんど。

>>とーびんと 工藤六兵衛翁の昔話(四) 目次へ