13 夢の家見貝生で、うんと昔の話だげんども、五人兄弟の子ども持ってたけと。そして一番目は家さ置く、二番目・三番目はそっちゃこっちゃ呉(け)てやって、一番末子(ばっちこ)はまだ若いななもんだから、めごくてめごくて呉(け)てやらんねくて、なじょかして家建てて新家に出したくていたったと。そんで、じさまも死んで、ばさまばりだったと。そして家建てる相談して立派な家建てたと。建てたげんども、自分が中風(症)になっているもんだから、行ってみたいげんども、行って見るべくもないもんだし、なじょかして行って見たいとて、毎日そいつを考えていだったと。そして死ぬ間際になってから、夢でその家さ行ったんだと。そして一番末子も妻(おかた)もらって二人ばりいたところが、 「なえだか、家のぐるり、ゴソラゴソラと夜中頃こげな家に、風吹くでもないにガタガタといる」 そうしている内、丁度戸の口の戸どころぁ、ザラーッェと窓なでる音などする。おかしいもんだどて、二人ぁいたと。そしていたところぁ、座敷の押入の戸なども、ス・ス・ス…と開けるような音する。そんでも二人なもんだから、 「いやいや、盗人でも入ったんだかも知んねえ、ただこげなこともしていらんねがら、にしゃ鎌持(たが)って、俺ぁ山(な)刀(た)持って、一つそいつを見て呉(く)れんなね」 と、家ン中(なか)じゅう見たと。そしたら、年寄ばさまみたいなのが、腰まげて、杖棒なのついで、ふらふらして、そこら内騒いでいる。そうすっど、二人でなじょかして呉(け)らんなねどて、追(ぼ)ったところぁ、そいつは家の前さ出はって、チョコチョコと行ったと。 「おかしげだ。影ぽちでもあるような、幽霊でもこげなもんだじだ」 とて、二人は追って行ったと。そしてつまり追って行ったところぁ、自分の生れた家の錠口さ入って行ったと。 「やいやい、こっちの家さ、とんでもない化物じだか、幽霊じだか入って行った」 そしたらば、家に寝っだばさま、 「ああ、今俺はバッチ子の家見に行って来たんだ。そしたらば、誰かに追っかけらっで、山刀や鎌持(たが)って、俺は杖棒ついでやっと家さ来たところだ。そこまで夢で、ポイと今、目さめたところだ」 と、いたけと。んだから夢だって、たんと一生懸命で見っど、そういうあんばいに、ヒョロヒョロと、恰好になって歩くもんだと。とーびんと。 |
>>とーびんと 工藤六兵衛翁の昔話(四) 目次へ |