21 デデッポッポオッカと子供一人いたったと。子供はソンピンでソンピンで、ときどき親から、「お前はあんまりソンピンで天邪鬼と同じだ」 と、こう言わっでだけと。山さ行って杉林でも見たり、松林でも見たり、根刈りでもして来いと言うと、 「田の草取って来た」 なんて、晩方帰って来たり、ほだかと思うと砂糖買って来いなんて言うと、南蛮粉買って来たり、 「何につけソンピンなことする。あんだは困ったもんだ」 と言う。そして今度は、オッカも年寄って、 「俺もじきに死ぬかも知んね。お前はそん時荼毘の引導に、壇がある。あの壇の上は見晴しもええべし、水や何かの心配のさっぱりないとこだ。壇の下はよくよくの川ぷちで、みんなは賽の河原と言ってる。あそこは非常にわるい。水ぁ出るたびに流っ来て埋(うず)まっだのまで、流れそうにも時々なるとこだ。ほんで、俺どこ一番悪いどこさ埋めて呉(け)ろ」 と言うた。息子はソンピンだから壇の上さ埋めてもらえると思って、 「一生のお願いだ。死んだら壇の下の賽の川のふちさ埋めて呉(け)ろ」 その時、息子は、 「いやいや、俺も今迄ソンピンたけていた。一生に一ぺんの親の願いでもあるし、すっから、こいつだけ聞かんなねべ」 とて、死んだ時賽の河原のふちさ埋めてしまったと。そうすっど、水ぁ出るたんびガホガホと棺埋めった上までも水ぁ来っかった。そん時アズキ花(テデッポッポ花ともいう)というの、うんと咲いったと。そいつを墓さ上げてお詣りすっかったと。そしてその花は丁度春先のテデッポッポの鳴く盛りに咲く花だと。んだからその花を採っど雨が降るという。そんでテデッポッポはこう鳴くなだと。くやしくてくやしくて、 テデッポッポ 雨が降るじど 土が流れる 乳(ちち)こ飲みたい テデッポッポ |
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