32 ばさまのトロロ飯

 秋(あき)行(ぎょう)に、自分の呉れた娘など、聟殿など、息子呉(け)っだオカタも来たと。そんで一生懸命で婆さま、
「おら家の餓鬼べら、皆トロロ飯好きだ」
 と、寒い時に畑さ行ってトロロ薯掘って来て、洗ってトロロ摺りしったと。そしていたところが婆さまなもんだから、水洟落ちる。そんで水洟落したところ自分の腹から出たのでない義理の娘や息子が見つけたと。自分の腹から出た娘や息子もそいつを見たと。
 いよいよトロロ飯出たからと、出したと。そしたば、自分の娘・息子はそいつ知ったげんど、元はダダ(母)に噛んで食(か)せてもらったんだもの、俺がうまくない面(つら)すっど悪いとて、うまそうに食ったと。自分の腹から出たのでない娘や息子は、そのトロロ飯決して食わなかったと。んだから、親子というものはそのくらいに違うもんだと。どーびんと。
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