25 木蓮尊者の話

 お釈迦さまの弟子に木蓮尊者という弟子がいたった。
 大磐若の辻札さ十六禅師と書いてある。それは十六人のよくよくの悪人だったのを仏に帰依させて、十六弟子とし、後に十六禅師となった。その一人に木蓮尊者がいた。
 木蓮尊者は頭はええがったし、務めもええがった。それがためにお釈迦さまにうんと可愛がらった。そして神通力という術まで自分で編み出した。そんで地獄・極楽というのはどういうもんだかと思って神通力をもって極楽を見た。自分の母は死んでしまったげんども、極楽には姿は見えなかった。それから地獄を見たところァ、地獄の餓鬼道地獄さ行ってみた。それは水も呑ませらんね、食いものは全然とらんない。そして大石を背負って鉄の橋、下さ火焚いて、上を裸で渡んなねどこで汗だらだらかいて、へたへたと青鬼赤鬼のついっだとこでいた。それを見た木蓮尊者が、とにかく自分の母親でもあるし、母さ食(か)せったくて持って行った団子や何かうまいものは、皆火になってしまって、口さ寄せらんねがったと。たまりかねてお釈迦さまに話したと。ところが、
「あれは盆の時だから簡単には行かない。今大勢のみんなに、トトサイお経あげてもらって、盆の十六日まで修行して、お経をみんなに上げてもらえ」
 と言うたと。
 それから尊者は一生懸命でお経を上げたと。そして十六日には、盆の豆だとか茄子とか胡瓜とか瓜とか餅・ソーメン・昆布などを持って行って食(か)せっどええと言わっだので、持って行くと、閻魔王にこう言わったと。
「お前は生きてるうちに、ない者をせめてあれ程の財産を造った。そんで口癖に言ったことは二度取りは大したことないげんど、三度取りはむずかしい、なんてそんなことして貯めたから、取らっだ田とか畑とかの、その人のうらみによって地獄さ落ちた。その財産を返してやると、お前を極楽さやる」
 と言わったと。そして地獄の釜の蓋も開くと言わっでる十六日、そん時の「地獄の釜の蓋も開く」という言葉は、こうして出来たんだと。どーびんと。
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