13 お江戸見物 

 三四人でお江戸さ見物に行ったと。そして、何だのかんだのと、行った連中は喧嘩始めたと。そしたば、昔はな、今は巡査と言うげんども、羅卒と言うたもんだ。その羅卒が来て、喧嘩を仲裁したと。そして一々名前を聞かんなねもんだから、聞いたと。一番始めの人は、
「何と名付った?」
 と、聞かっで、
「いや、俺はタノクロだ」
「田の畔?田の畔などいう人あっか、苗字と名前か、そいつは…」
「丹野九郎だぜ、俺は」
「そうか」
 その次、聞かったと。
「お前は何と名付った?」
「コンドイウゾー」
「今度言うざァ、あんまいちゃえ、貴様今言え」
「馬鹿つかして、俺は近藤勇蔵だ。俺は早口だから、お前そう聞えたんだべ」
「お前は何だ」
「オオカタソウダロウ」
「…」
「大方惣太郎」
「お前は…?」
「へへへへ」
「何だ、へへへ…ざァ、字で書いてみろ」
「平平平平」
「こりゃ一体何と読むのだ」
「ひらたいら、へっぺいと言うんだ。俺は簡単にへへへへと言うたんだ」
 んだから、名前も言いようでは面白くなるもんだなァ。とーびんと。
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