3 南山の馬鹿聟

 南山の馬鹿聟は嫁もらったと。そしたば次の日、
「やいやい、そなたオカタ貰ったってな」
「貰った」
「なじょなもんだっけ、オカタざァ」
 と言うと、
「なじょなもんだなんて、何のことだ」
「んじゃ、納戸さ、床祝いして寝たべした」
「寝た」
「それから、なじょだこと」
「なえだか、おら分んねげんど、こがえな歌詠みみたえな、モゾ語って仕様なかった」
「なじょな文句だっけ」
 と言うたれば、
「のらばのせる、のらねばのせぬ渡し舟、さあのらっしゃい、さあのらっしゃい、なんて歌、なんべんか語ってたけなァ」
「ほう、そん時だごで、その舟さ、そなた、さっと乘って、自分の思うところさ行くの。そいつだごで。貴様、馬鹿だも、貰うに早いがったんだ。そしてオカタと言うものは、お飯(まま)は食(か)せんなねげんども、上と下の口さ食せんなねもんだ」
「ははァ」
 晩方、夜上りして来たところが、オカタは仰向けにひっくり返って、コタツやぐらの上さ足上げて、ちゃんと膝立てて眠ってたけと。
「いや、今日の話には、上と下の口さ食(か)せんなねと言うのだから…」
 と、お膳拵ってお飯(まま)・お汁・お菜(さい)もって行って、コタツやぐらの下さ御膳入っでやったと。
 そがえなものだったべな。南山の馬鹿聟ざァ。とーびんと。
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