41 ジョッキ蛇

 小国に大宮子易大明神がある。その裏に竹藪がある。その竹藪にいる蛇が腹から下、ボキッともげて、頭ばりの蛇だったと。そいつはなしてだかなァ。
 まいど、そこに長い蛇ァいたったと。そんで頭と尻尾がうんと仲わるくて、尻尾の言い分には、
「頭なんつァ、ええ勝手なことばりするもんだ、自分の行きたい方さ行くし、自分の見たいものはいつまでも見てる。自分の食いたいものは食ったり、聞きたいものは聞いたりして、おらだ何というと、頭の方でうまいもの食ったなの、尻尾なもんだから、小便・バッコなど始末などばかりしんなね。おらだぐらい間に合わねのない」
 と。それで頭と尻尾はうんと仲わるかったと。あるとき喧嘩して、頭の方は考えて、
「んだれば、お前だ勝手にしてええから、今日からお前の勝手にしやれ」
 と言うたところァ、今度は尻尾は先に歩かんなねわけだ。げんども目(まなぐ)もなければ耳もなければ口もなければ、なもんだから、さっぱり食うべくも見んべくも、歩(あえ)ぶべくもなくて、さっぱり何も食(か)んねがったほでに、罰当って腹から下ぺろっと腐っでしまったんだど。んだから、ボギーッとして腹から下ないのだと。とーびんと。
 んだから上のものは下を立てておかんなねし、下のものは上のものに従わんなねもんだと。
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