34 嘘かたり

 嘘かたりの先生で、何もかにも嘘語って、〈八百の嘘を上手に並べても、誠一つにかなわざりけり〉という。
 よく嘘語って、そんげなこと語りかたり、歩っかったと。そんで、〈嘘じんつぁ〉なんて名付(つか)っていたと。
「やいやい、今日も一服のんで、俺さ嘘話おしえろィ」
「うん、嘘話か、今日はそんがえ呑気なことしていらんねんだず。隣の親父は、まず今にも目落すか、死んだんだかはァ。まず家さ行って、病気見舞いの準備して、俺ァ病気見舞い行かんなねなだ。そんがえしてなどいらんねんだ」
 というこんで、ドタバタと行ったと。そいつはまるで嘘だったと。それくらいな嘘語りだったと。
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