31 占 師占師は、まいど、ええ家ずっとよく廻って歩(ある)いったもんだ。そしていたところが、娘一人いたった。その娘はすこぶる別嬪で、そっちからもこっちからも仲人さっで、仕様ない。そんで占師が来たもんだから、「どうか、神降しでもして、おらえの娘、どっちさ呉(け)たらええんだか、下げて呉(け)ろ」 と、こう言うた。そして占師は見っだけずァ、 「ええ娘でもあんだし、こいつぁ俺のオカタにええなァ」 と思ったもんだから、〈ああ、よしよし〉というもんで、祈って(おがんで)、 「明日(あした)か明後日(あさって)のうちに、東の方から、なんぼくらいな男で、どれくらいな身体(なり)の丈で、どういうような仲人が来るか、その仲人が来たときだらば必ず呉(け)っじゃ方ええ、今迄来たのは、どうもよろしくない。方角がわるい」 「ほう!」 と、この占師も相当信じらっでいたもんだから、とて、その明後日、占師が言うのと同じような仲人が行ったもんだから、 「ほんじゃ、あまりええ、貰っておくやい」 と言うもんで、すぐ返事が出たと。 そして嫁(むかさり)が行ってみたところ、なんだか聟が占師みたいなで、おかしいとていたったと。そしたれば、その占師だったと。とーびんと。 |
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