27 トクサのワラジ荒砥の郵便局さ、郵便もちがいたったと。郵便もちというのは、毎日歩かんなね。そいつァ秋の日で道がわるい。藁で作ったワラジだと、一日(ひして)に七足も十足も履かんなねがったと。いろいろ考えて、トクサのワラジ作ったれば切れまいと思って郵便もちはトクサのワラジ作ったと。トクサのワラジ履いて、打越の入口まで行ってタバコすっど思ったら、足の平(ひら)があんまり軽いもんで、ちょっとタバコして足の平ば見たら、足首まで減ってしまっていたっけと。 して、いよいよ打越さ行って弥吉という、打越一番の金持の家さ行って、 「ゆうびん、ゆうびん」 と、郵便もちは怒鳴ったと。弥吉の家の人が戸を開けてみたげんど、どこにも郵便もちいなかったと。よく見たら、首さワラジあったと。 タバコ一服つけて、郵便もちは帰っど思って、 「首ばりではめんどうくさいから、歩(あ)いであるくには、そのカバンさ首を入っで行くべはァ」 と、カバンに首をパッと入っでかついて来たと。 |
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